「仕事のストレス判定図」の活用例


事例1:「仕事のストレス判定図」によって問題が発見された交代勤務

ある事業所の製造ラインの男性従業員を調査し、日勤のみの現業グループ、製造現場の技術員および3つの交代勤務グループの仕事のストレスを「判定図」を用いて比べました(男性用判定図を使用)。3番目の交代勤務グループ(右図の■印)では他のグループにくらべて仕事の量的負担が高く仕事のコントロール(自由度)が低く、その健康リスクは140と判定されました。上司や従業員にヒアリングを行ったところ、このグループでは夜勤シフトから昼勤への交代時におる引き継ぎの時間が短時間しか設けられておらず、夜間のトラブルなどがきちんと伝達されず困難を生じていました。その後、勤務スケジュールの改善によりこのグループのストレスは軽減されました。


事例2:上司教育によるストレス対策の効果

ある事業所(従業員約2千人)では、上司を対象とするストレスに関する教育・研修を係長職以上全員に実施しました。教育は、1回あたりの30名程度、1時間の講義と討論で構成され、非常勤のカウンセラーによって実施されました。教育の前後で、この事業所の全従業員に調査を実施し、仕事のストレス判定図(男性が80%を占めるので男性用判定図を使用)にあてはめたところ(左図の■と●)、教育後には仕事の量的負担が減少し仕事のコントロールが増加、さらに上司の支援が0.4点増加しました。これは教育未実施の事業所の同時期の調査(図の□と○)と比べても明らかな変化でした。教育を実施した事業所では、健康リスクは合計約8%減少したと推定され、教育後の調査では実際に精神的な訴え(抑うつ)や平均血圧が減少していました。この他の効果についてはさらに長期の観察が必要ですが、今後事業所全体で疾病休業および医療費の8%が改善すると予想され、経済的にも大きな効果が期待できます(河島他, 1997より)。